残留農薬の検査は可食部を対象に実施!気になる濃度は食品分析で調べられる

食品の製造や販売をする業者はポジティブリスト制度に基づき、食品に含まれる残留農薬のチェックが求められています。こうしたチェックは食品分析を実施することで可能です。ただ、こうした検査は具体的に食材のどの部分を対象に行われているのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。

そこで、今回はポジティブリスト制度の概要を説明するとともに、食品検査を実施する意義などについても解説します。

「ネオニコチノイドの効果と残留農薬の問題について」

検査はポジティブリスト制度が基準!可食部の範囲は食材によって異なるので注意

2006年5月、厚生労働省の方針により食品衛生法の一部が改正され、現在ではさまざまな食品の出荷・流通に対してポジティブリスト制度が実施されています。このポジティブリスト制度とは、食品中に残留する農薬などによる被害を防止するため、全ての農薬、飼料添加物、動物用医薬品について残留基準を設け、食の安全性を明確にするためのものです。

この制度により、基準値を超える農産物の出荷・流通・販売は禁止されており、食品ごとに定められた基準値をオーバーした生産物に関してはすべて回収することが義務づけられています。このポジティブリスト制度による残留農薬の検査は、原則として可食部を対象に行われます。

ただ、この可食部の定義は一般的な認識と大きく異なる場合があるので注意が必要です。例えば、バナナを含む一部の食品に関しては、通常は口にしないと考えられる皮の部分なども検査対象となっています。これは調理方法や加工の仕方によっては、皮もそのまま食材として使う場合もあるからです。

このように、残留農薬の検査は一般的に実と認識されている部分にだけ実施されるわけではありません。残留農薬を検査する場合には、あらかじめ厚生労働省が示す食材ごとの指針に従って検査することが大切となります。

残留農薬の基準は食材ごとに違う!具体的な数値はリストなどでチェック

ポジティブリスト制度が定める残留農薬の基準は、国際的な指標となっている「コーデックス基準」、農薬取締法に基づく「登録保留基準」などを基に決められています。また、諸外国が独自に決めた基準がある場合は「暫定基準値」を参考とし、基準値が得に定められていない食品に関しては「一律基準」を用いて判断することになっています。

このように、残留農薬の基準値はそれぞれの食品によって異なります。特に輸入や輸出に関わる場合は、国によっても判断基準が変わるので注意しましょう。基準値に関する数値は、品目ごとに厚生労働省や公益財団法人などがリストにまとめて発表しています。

国内の加工業者や食料品の輸出入に関わる業者の方で、具体的な数値を知りたい場合はこうした情報を基に数値を調べてみましょう。また、自社が関わる食品が基準値をクリアしているのかどうかについては、食品分析を実施する企業に依頼すれば調べられます。

この食品分析では、国内のポジティブリスト制度はもちろんのこと、それぞれの国の基準値に適合しているかについても詳しく調べることが可能です。また、農薬の残留数値以外にもさまざまな検査が可能で、こうした検査も合わせて実施すれば、自社が扱う製品の安全性をより多角的な側面から判断できます。

食材検査の方法はさまざま!基準値をオーバーしている食材は速やかな回収が必要

残留農薬の検査は国内流通品なら各都道府県が、輸入品については国(検疫所)が実施しています。国内における主な検査方法は、製造所内の立ち入り検査や販売店でのサンプル調査などです。これらの検査で基準値を超える農薬が検出された場合、その食品の販売はできず、速やかに製造所や販売所の責任において回収する必要が生じます。

また、海外から食材を輸入する場合などには検疫所への事前の届け出が必要です。その際には届け出貨物が食品衛生法に合致しているかを判断する目的で、先行サンプル検査や自主検査による結果の提出を求められることもあります。

このように、一口に残留農薬検査といっても、その検査方法はさまざまです。ただ、いずれにせよサンプルの提出や自主検査の結果の提供を求められた場合に適切な対応が取れなければ、その食品の販売自体ができなくなる可能性も出てきます。

食品分析を通じた残留農薬のチェックはこうした検査が実施された場合に、スムーズに提供できる資料としても役に立ちます。

残留農薬は食品分析でチェック!検査方法は食材に合わせて選ぶことも可能

食品分析を通じた残留農薬のチェック方法には「一斉分析」や「個別分析」といった方法などがあります。このうち、一斉分析は複数の農薬を一度に分析する方法で、この方法ならば複数の食材に含まれる成分をまとめて分析することが可能です。

一方の個別分析は1種類の農薬にターゲットを絞って検査する方法で、この検査方法ならば、一斉分析では検出できない農薬も高精度で検出することができます。このように、食品分析では食材の特徴や総数などに合わせた最適な分析方法を選ぶことが可能です。

また、可食部分はもちろんのこと、皮あるいは双方が混ざったものなど食品の特徴に合わせた検査も実施することができます。

食品分析の重要性!実施した食品分析の結果はトラブル発生の防止に役立つ

食品分析は食の安全を確保するために実施する検査です。こうした検査は農作物の生産現場はもちろんのこと、輸入業者、加工業者、販売業者のそれぞれが責任を持って実施することが望ましいと考えられています。言うまでもなく、検査の実施者の数が増えるほど、あるいは検査サンプルの数が増えるほど検査結果の精度が増し、それだけ食品の安全性が高まるからです。

また、食品分析を実施する意義は何も消費者にのみあるわけではありません。例えば、加工業者や販売業者が残留農薬の基準値をオーバーを保健所などから指摘された場合、店頭に並んでいる商品はもちろんのこと、すでに販売した商品も含めて速やかに回収する義務が生じます。

こうしたトラブルで発生する社会的信用の失墜や金銭的損失は非常に大きなものとなりますが、事前に食品分析によるチェックを実施しておけば、このような大きなトラブルも未然に防ぐことができるのです。食の安全性への関心が高まっている昨今、食品分析をする意義はますます高まっています。

特にポジティブリスト制度の実施以降、可食部分の残留農薬のチェックはより一層厳格なものとなっており、生産業者、輸入業者、加工業者、販売者などはより高度な商品管理を求められるようになってきました。こうした状況から、食品の生産や販売に関わる業者はこれまで以上に職に対する安全性に敏感になることが求められます。

食品検査はこうした社会のニーズに応え、健全かつより安心できる生産・販売現場の構築にも役立っています。